新宿駅東口に、松山智一氏のパブリックアートが出来た。

松山氏にとって、日本初の巨大なパブリックアート「花尾」(英語表記 Hanao-San)。テーマは「Metro – Bewilder」(メトロビウィルダー)。都会を意味する「Metro」(メトロ)、自然を意味する「Wild」(ワイルド)、当惑を意味する「Bewilder」(ビウィルダー)の3つを組み合わせた造語で、構想から2年半を要したとのこと。
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広場の中央には、「花束を持っている少年」をモチーフにした7mの巨大彫刻作品「花尾」が設置され、台座も入れると8メートルもの高さ。花を持っている人物が、ここに暮らすローカルな人達、海外から来るグローバルな人達の両方ともを歓迎するアイコニックな存在にと。抽象化された概念の人物象の背面に花の尾っぽを造形的に付け足したことで、名前を“花尾”に。
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鎌倉時代の仏教彫刻で使われている柄や、中世のダマスク柄、あるいは新宿でも大量消費されている洋服のテキスタイルの柄などが入っている。画家がつくる彫刻というのは、フラットな二次元的な要素があるので、画家でしかつくれない彫刻をつくろうと、二次元的な柄をどうやって複雑な造作物にするかは挑戦だと。マルチアングルで、素材は鏡面仕上げで、周囲の色を写し出しているのも面白い。
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彫刻は中身に芯部があり、そこの周りに肉付けした造形で作られるが、この作品は板状に溶接されたプレートが互いに構造的に支え合うだけなので、そうした内部構造がほとんどなく、かなり複雑な構造になっている。設計士以外に構造建築士にも依頼していると。日本ではこの作品を作ることが出来る工房がひとつもなくて、設計図は日本語で作り、それを海外の工房で作ってもらったのだそう。
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床面の色は、周囲の看板の色から。周囲の環境に抗うことなく、その色の彩度を上げることで、異物感を出しすぎることなくアートを馴染ませ、コンクリートやモルタル、タイルなど、周囲環境にある素材を全部床にパッチワークさせている。
地面にランドアート、カラーフィールドのような鮮やかなランドスケープがあるが、巨大な円卓の上に緑を置いて、本物の自然と人工物と、人工物でありアートで作った自然を融合させている。

また、sinato代表の大野力氏が、松山氏のラフプランを基にベンチが組み込まれた R状の壁や、彫刻足元の台座部分、植栽部分のデザイン、各種素材の提案など、アートと建築がひとつになるように全体の建築デザイン設計を担当。
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松山氏曰く、アーティストがパブリック・アートを介して動線をつくり、人が集まり、地価が上がって経済につながる。アートを使った文化のインフラ整備が、いかに経済に直結する影響力を持っているかを知るべきで、文化インフラの整備がしたい。アートを見るのではなく、機能させると。美術館のようなインフラのなかに入るアートという既存の構造ではなく、それを逆転させるスキームができれば、と。

今まで見て来た松山智一氏の作品は:



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